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◉震災発レポート

新発掘!? 震災直前の貴重な写真
区内の震災資料展

神戸市長田区・長田区役所 ◉ 2010年1月15日
人・街・ながた震災資料室
「震災15年 1.17震災資料室展」

text by kin

2011.1  up
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長田区役所内には、区民から集めた震災関係資料を管理・展示する「人・街・ながた震災資料室」がある。資料室といっても常設の部屋があるわけではなく、多くの資料もいつもは、広い部屋の隅に並んだいくつかのガラスケースの中に並んでいるだけだ。震災から15年を迎える1月17日前後の期間、それらの所蔵品が一同に広げられ展示されるということなので、区役所7階の区民ギャラリーを訪れてみた。

戦災と震災の被災範囲比較データも

震災資料室の資料を見学するのは初めてである。展示されている7階の広いフロアにも初めて上がった。ここは震災の時に、多くの区民が避難していた場所でもある。広いガラス窓からは神戸の街を遠くまで望め、とても見晴らしがいい。そのフロアスペースをゆったり使って、資料が展示されていた。

避難所で使われていたという炊き出しの大きな釜や日誌、止まったままの大時計、焼け跡からの見つかった家財、『男はつらいよ』ロケの写真や資料、数々の行政資料などだ。図書館にはない現場の一次資料や灰色資料が多く、そこからは実際のリアリティが感じられる。当時は日常の身の回りにあったものを、よく捨てずに保存したものだと思う。そうした生活感の集積された様は、まるで郷土資料館のようである。

"資料室調べ"と言う独自調査の資料が掲示されていた。これは戦災時の被災区域と震災の被災範囲を比較したデータで、なかなか興味深い視点だった。ふたつの被災領域が重なっているのではないかという疑問から始めたもので、以前発行した『資料室ニュース』で掲載した記事だという。戦災に遭わなかったために古い街が残り、そこが今回の震災で被災したという話も聞いたことがあったので、この調査内容が全てではないだろうが、"ダブルで被災した地域"もあるかもしれない。ペラ1くらいの簡易な紙面だったので、このような地域の歴史を大学生が本格的に卒論として調べてみるのも面白いだろう。

新発見? 震災直前の久二塚の写真

そして今回の展示の中で私が最も注目した資料が、アルバムに整理されていた写真だった。区が撮影していたという震災前の街を写した写真である。これは固定資産税か何かの調査記録用に撮影された写真だということで、街や商店街の十字路の手前付近の道の真ん中から、その街路の様子を広角で正確に押さえているものだった。撮影地点には新長田南の全焼地区、久二塚周辺の昭和筋商店街や大正筋商店街なども含まれていた。しかも撮影日時は、震災直前1ヶ月前の1994年12月とある。他の場所を含めても、これほど直前の写真は見た事が無い。まさかこんなものが存在してるとは、という「新発見」と言っても過言ではないほどの驚きである。新聞やテレビでニュースになってもおかしくはない。

現在アスタには、国道2号線下の地下道や店舗スペースに「震災資料室」が設けられ、様々な資料や写真が展示されているが、そこでも見たことがなかった。後日ここを訪れた元人と防災未来センター(人防)研究者の友人も驚いていたので、これは本当に貴重なものだろう。こんなすごい資料も平然とテーブルに置かれていた。

これまではあの焼け落ちたアーケードの光景からは、震災前の姿というものを想像することができなかったが、これを見ると、今も昭和筋や大正筋の周囲の新長田南地区に残っている、六間道や本町筋のような"普通のアーケード商店街"だったことがわかる。震災前の街の写真というのは、特に全焼地域ではどこもほとんど残っておらず、残っているとすればこのような行政やデベロッパーの内部記録しかない。今回このように発掘されたものは、まさに区役所ならではの資料である。

この震災前の商店街の写真も存在自体すら知らなかったが、もし知っていたとすれば、どうすれば市民がこのような行政の灰色資料に触れられるのだろうか。ふつうは市に対して情報公開請求を行い開示決定の判断の後に後日閲覧、という手続きを踏まなくてはならない。そうした資料がこの「震災資料室」に上ってきたということは、区役所職員の誰かの中にアーカイブの意識と直感があったためだろう。そうした意識が浸透し、頭の片隅に残っていたこと自体がスゴいことだと思う。公文書館がなく未整理の状態だと、普通は保存期間の経過後は廃棄されてしまう類いのものだ。現在、神戸市自体でも震災関連の公文書館の設置が検討されてはいるが、まだ貯めているだけで関連文書全体の整理までは進んでいない状態であるとの報道もあった。今後、震災関連公文書の整理によってこうした資料も発掘されるかもしれず、期待したいところである。

人防などと比べても全体的には地味といえば地味だが、ここには知る人が見ればとても興味深い、ここにしかない資料があった。管理している人がおられるので、そうした方の解説を伺いながら見れば、とても貴重な体験学習ができるだろう。次回の展示でタイミングが合えばあれば、今度はゆっくりと見学してみたい。

[了]

#文中に登場する名称・データ等は、初出当時の情況に基づいています。

◉データ
震災15年 1.17震災資料室展
開催日:2010年1月13日〜18日
場所:長田区役所(兵庫県神戸市長田区北町)
       7F 区民ギャラリー「人・街・ながた震災資料室」

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Text & Photos kin

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1.17震災資料室展(兵庫県神戸市長田区・長田区役所 2010年1月15日)
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