◉まち・コミレポート
修学旅行生への震災学習 ❶
〜8年目の現状〜
神戸市長田区御蔵通 ◉ 2008年7月1日
Text & Photos by 戸田真由美
初出『月刊まち・コミ』
2011.1 up
- まち歩きで慰霊碑の説明を受ける(神戸市長田区御蔵通・御蔵北公園 2008年5月)
Photo:まち・コミュニケーション
まち・コミュニケーションの事業のひとつである、修学旅行生への震災学習。2008年6月22日で、今年度前半の受け入れが無事終了しました。2001年に1校受け入れたことから始まり、現在では、年間20校程度の震災学習を実施しています。震災学習の始まりから現状までを、まとめてお伝えします。
震災学習の概要
神戸市は、言わずと知れた観光のまち。以前から、体験学習以外にも、商店街での商人体験など、長田北野の異人館街や元町の中華街などを中心に、多くの修学旅行生が訪れていました。近年「体験学習」を修学旅行プログラムに組み込む傾向が強まり、神戸でできる体験学習の一つとして、震災体験学習が注目されるようになりました。
御蔵地区では2001年、特定非営利活動法人神戸まちづくり研究所(神戸市中央区)から、名古屋市立日比野中学校の80人程度に体験学習をしてくれませんかという話があり、なんとかやってみようということで、手探り状態で始めました。
2003年には、長田区内で個別に体験学習の受け入れをしているグループをネットワーク化する「神戸ながたコンベンション協議会」ができました。震災でできる体験学習の窓口となっています。まち・コミュニケーションもメンバーに入り、この年から、震災学習の実施回数が年間20校程度にまで増えました。01年から08年6月末まで、実施終了したものを数えると、述べ119校に上ります。
まち・コミュニケーションの震災学習は、地元有志の語り部さんの協力を得て実施しています。生の声が聞ける、語り部さんの案内で現地を歩くことができる、といったことが、特徴となっています。これらの体験は、個人旅行では体験できない学習でもあります。
2002年にオープンした阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター(中央区)で震災の全体像を学び、現地学習として、まち・コミュニケーションへの申し込みをするというパターンが増えています。
震災学習の内容
まち・コミュニケーションでの震災学習は、学校の先生からのご希望がある場合と、旅行社が提案する場合があるようですが、早いところでは約2年前から予約があります。
研修内容は、基本的に2プランあります。「スライド・語り部への質問・まち歩き」(所要時間2時間)と、「スライド・語り部への質問・まち歩き・炊き出し体験・食事・片づけ」(所要時間4時間)です。
長田区役所まちづくり課にご協力いただき、スライドや質問をする場所は、区役所7階のにある会議室をお借りしています。生徒達はバスで区役所横に到着後、階段で上っていきます。しんどいと不満をもらす生徒が多くいますが、7階についてから「この場所でも避難者が生活しました。電気が止まったので、エレベーターは動きません。水は1階から持って上がりました」との語り部さんの話に、避難生活への想像をふくらませています。
スライドでは、まち・コミ代表の宮定が、御蔵の被災状況や、最低限知って欲しいことを、写真や図を用いて説明します。
そして、語り部さんへの質問。
…直後の気持ちは? …震災で学んだことは? …避難所の様子は? …苦労したことは何? …直後の街を見てどう思った? …仮設住宅のことを教えてください。 …地震対策をしていましたか? …僕たちにできることはありますか?
といった質問があります。また、
…分け合う事の意義は? …助け合う事の意義は?
といった、語り部さん自身改めて考えさせられる場面も。その一つ一つに、語り部さんが当時を思い出しながら答えます。
[続く]
岩波書店
市民でも知らなかった神戸の歴史やエピソードが満載
◉初出誌
『月刊まち・コミ』2008年5.6月号(阪神・淡路大震災まち支援グループ まち・コミュニケーション発行 2008年7月1日発行)掲載を再録。
◎ 元記事リンク:『月刊まち・コミ』バックナンバー
#文中に登場する名称・データ等は、初出当時の情況に基づいています。
- 阪神・淡路大震災まち支援グループ まち・コミュニケーション
- まち・コミブログ
- 活動紹介>震災体験学習受入について - WEBまち・コミ:『震災体験学習のご案内パンフレット』pdf、基礎データ[モデルプラン、体験学習感想、受入実績、取材、事前学習、資料、御蔵地区紹介など]、活動報告
- 阪神・淡路大震災体験学習(修学旅行)受入 - まち・コミブログ
- 『月刊まち・コミ』タイトル一覧
- 震災発 - 震災学習・防災教育リンク集
- 団体向けプログラム 震災学習プログラム - 阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター
- 神戸ながたコンベンション協議会:長田における震災学習のコーディネート。野田北部、御蔵、新長田の商店街などいくつもの象徴的な場所で、語り部の話を聴く、街を歩く、炊き出しをする等の内容や時間を組み合わせることができる
- 特定非営利活動法人 神戸まちづくり研究所:震災体験現地交流プログラム。灘区、中央区などでの震災学習コーディネート
- 修学旅行・班別行動プログラム ようこそ神戸・長田へ この街に訪れる修学旅行生の皆様へ:近畿タクシー株式会社
- 震災体験学習 - 社団法人ひょうごツーリズム協会:感動体験!兵庫|兵庫県 体験・交流ガイド
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