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◉震災発コラム

神戸からトルコ・台湾へ
被災地から被災地へのエール

神戸市立兵庫中学校 ◉ 2000年1月16日
花の宴〜神戸新開地復興祭2000〜

text by kin

2000 Spring  up
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花の宴〜神戸新開地復興祭2000〜(神戸市兵庫区・神戸市立兵庫中学校校庭 2000年1月16日)
「花の宴〜神戸新開地復興祭2000〜」で集まったトルコ・台湾の被災者へ応援メッセージ
(神戸市兵庫区・神戸市立兵庫中学校校庭 2000年1月16日) Photo:Kawai [クリックで拡大]

震災5周年、神戸は復興したか

2000年1月、阪神・淡路大震災5周年を目前にしてようやく最後の仮設住宅から入居者がいなくなった。街には復興住宅も多く建てられた。区画整理事業の地域にも本建築の住宅が建ち並ぶようになり、街の風景にも変化が感じられようになってきた。そうした表層を眺めてみると、5年が経ってようやく神戸は復興したかのように見えるが本当にそうだろうか。地域で活動している人からすると、心の復興はまだまだ見えてこないと皆が口を揃えて言う。

そんな中迎える5回目の1月17日の前日、1月16日に新開地の兵庫中学校で復興祭「花の宴」が開催された。これは兵庫、長田の西神戸周辺で高齢者や障害者の活動に携わっている団体が協力し、準備を進めてきたものである。これまでもそれぞれでは共同作業所なども関わる小さなイベントをいくつも行ってきたが、5周年の1月17日を迎えるにあたり地域も巻き込んでの「出会いの場」を広げたいと企画された。新開地のある兵庫区は神戸市中央区と長田区の間に位置し、古くからの繁華街もあり通勤住民が多く住むような性格の街である。

会場では多国籍屋台やアジアのおもちゃ、野点お茶会、障害者共同作業所も参加したフリーマーケット、そして餅つき大会などが行われた。この年末年始にかけて毎週のようにいろいろなイベントで餅つきを仕切っていたという長田区ボランティアセンターのチームが、すっかり慣れた手つきでここでも奮闘している。 お客さんたちもつきたてのきな粉餅を待っていた。校庭では韓国や沖縄の踊りが披露され、イラストレーター涌嶋克己(WAKKUN)さんによるライヴ・ペインティングも展開。ステージではさっちゃん&バナナ-ズ、おーまきちまきさんやソウル・フラワー・モノノケ・サミットなどのコンサートが行われた。

子ども達からトルコ・台湾の被災者へ応援メッセージ

その中、この祭のテーマのひとつとしてあったのが、トルコ・台湾大地震の被災者支援だった。会場の一角に〈トルコ・台湾へメッセージを届けよう〉というコーナーを設け、ハガキ大の紙に励ましのメッセージを書いて貰い、それを校庭を仕切る防護ネットに張り展示した。

あらかじめ長田区の池田小、長田高校と兵庫中(兵庫区)に協力して頂き、児童・生徒にたくさんのメッセージを書いて貰ったのだが、その数は数百枚にも上った。その書き込まれた用紙を一つ一つ見ていくと、どれもが思ったよりもきちんと書いてある。今の高校生だと阪神・淡路大震災当時は小学生で、小学生だと幼稚園児くらいだっただろうか。そんな薄いと思われる震災の記憶の中で生活を送ってきた中で、みんな神戸の被災地としての意識がどこかにあるのだろう。文字数の多い少ないなどは別にしても、どのメッセージも自分たちの被災体験をもとにした心の底からの熱のこもった応援メッセージばかりだったことに驚かされた。来場者の方々も先に展示されていたそれらの用紙をじっくりと見ている。そして見るばかりでなく新しく自分のメッセージを熱心に書き込んでいた。

ややもすると、それぞれ5カ月と4カ月が経過したトルコと台湾については遠い外国での出来事だったこともあり、震災が起こったことすら忘れてしまったりもする。しかしここは同じようなつらい経験をした被災地である。その痛みが分かるのだろう。神戸からはすでに撤去されたばかりの仮設住宅や義援金を送って支援をしていたが、そうした素早い支援の対応も、市民みんなが他人事とは思えなかったということもあるのだろう。

他人の痛みのわかる、思いやりのこころ

最終的にメッセージ・カードは800通にもなった。それらが校庭のネット一面に張り出された姿は、壮観そのもの。同時に設けられていた義援金募金箱の中にも札が入っていたりもし、反応は思っていたよりも大きいものだった。こうしたメッセージ・カードや義援金は関係者の手によって、直接トルコ・台湾の被災者に届けられる予定である。神戸の被災者の心も街もまだまだ癒えないが、他人の痛みのわかる思いやりの心は、そう簡単には消えないのだ。

日中は曇りで気温が低いという天候で、夕方以降は雨も降り出してしまった。そうした悪条件の中での開催にもかかわらず、のべ千人ほどもの地域住民の方々が訪れた。 長田から出発し被災地を巡って東遊園地まで歩くイベント「第2回こうべ ウォーク」も開催されており、そちらの参加者も途中で立ち寄ってくれるなど賑やかなイベントとなった。

[了]

◉初出誌
2000年春の報告文を加筆し再録。
#文中に登場する名称・データ等は、初出当時の情況に基づいています。

◉データ(2000年時点)
花の宴〜神戸新開地 復興祭2000〜
開催日:2000年1月16日 10:30〜17:30
場所:神戸市立兵庫中学校 校庭(神戸市兵庫区永沢町)
主催:花の宴実行委員会
   [実行委員会]:トゥモロー編集室、グループ寺子屋、すたあと長田
共催:NPO百番目のTシャツ、街のイスキア
後援:全国社会福祉協議会、永沢町自治会、兵庫区社会福祉協議会
協力:神戸市立兵庫中学校、神戸元気村、共同作業所くららベーカリー、
       永沢町老人会、石本洋紙店、NPO被災地障害者センター、
       (株)ブルーラインエクスプレス
 
▶トルコ・台湾大地震
トルコ北西部大地震
           1999年8月17日(マルマラ地震)
           1999年11月12日(デュズジェ地震)
台湾中部地震/921大地震/集集大地震
           1999年9月21日

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花の宴〜神戸新開地復興祭 2010年1月16日)
トルコ・台湾の被災者へ多くの
メッセージが集まった。
(神戸市兵庫区・市立兵庫中学校)
2010年1月16日(Photo:Kawai)
花の宴〜神戸新開地復興祭2000〜(神戸市兵庫区・神戸市立兵庫中学校校庭 2000年1月16日)
花の宴〜神戸新開地復興祭
(長田区菅原通)1997年3月29日
花の宴〜神戸新開地復興祭2000〜(神戸市兵庫区・神戸市立兵庫中学校校庭 2000年1月16日)
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