阪神・淡路大震災で失われたモノ、残されたモノ、生まれたモノ…そんな記憶を記録します。

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◉コラム

「仮設住宅」って、一体どんなんや?

神戸市兵庫区 ◉ 1995年10月
仮設会下山住宅

text by Tomoko

1995.10  up
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日常の中の仮設住宅

私たちの中ではとても身近な存在の「仮設住宅」。『ウィークリーニーズ』の配達でももちろん回っているし、知人が「今、仮設に入ってんねん」というのも、ここでは比較的日常の中での会話。しかし被災地の外にいる人たちにとって、仮設住宅なんて非日常の世界。仮設の人たちは、一体どんな所で生活を送っているのか。私も今までとは少し違った観点で、今回、兵庫区の会下山(えげやま)公園内の仮設住宅にお邪魔した。

兵庫区といっても10歩くらい西に行けば、あらそこはもう長田区。最寄りの駅から500mくらに及ぶ長い坂を登りきり、やっと公園に着いたかと思うとまた階段! 世間一般にはヤングで体力あふれる世代のこの私も、息切れが……。ここにたどり着くまでには、案内板や立て看板といったいわゆる道しるべ的なものもなく、とにかく「不便」!

そんな私が訪ねたのは、毎日ここで生活している山田さん(74歳女性・仮名)のお宅。突然の取材だったのだが、とてもあたたかく迎えてくれた。

前の家と比べると当然のことやねんけど、中が狭い。一番困るのはお風呂! 段差が高いし滑りやすいしで、慣れるまで時間がかかった。私は足が悪いからねぇ。あの冷房も、付いとったってリモコンの使い方わからへんかったから、最初つけることも出来へんかった。まあ、言うても住めば都。ここの生活も慣れてはきている。自治会もできたしねぇ。

相次ぐ孤独死や生活上の細々とした問題を、自分たちの力で解決させるためにも、どこの仮設も自治会作りが急がれている。

水たまり防止のために、一面に敷き詰められた砂利。そこに建つ、全く同じ変化のないプレハブの家。けれどよく見渡せば、隅っこの方で家庭菜園を世話するおばあさんがいる。庭がなくっても、みんなプランターなどで小さな自分の庭を作っている。井戸端会議だっって健在だ。

仮設の一般的な更新期限は1年。でも、1年後の新たな生活地を見い出している人なんて、果たしているのだろうか? おばあさんが本当に足を伸ばして生活できるのは、一体いつ?

[了]

◉初出誌
『さぽおたあ通信』(すたあと長田発行,1995年) & ミニコミ誌『学級日記』第2号(自主発行,1996年2月10日発行)掲載を再録。
#文中に登場する名称・データ等は、初出当時の情況に基づいています。

◉データ
仮設会下山住宅
場所:兵庫県神戸市兵庫区会下山町3丁目(会下山公園/会下山遊園内)
建設棟数:10棟
建設戸数:75戸
募集時期:第1次募集
世帯数:73世帯(ピーク時)
鍵渡日:1995年3月10日
閉鎖:1999年8月

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Text Tomoko

震災当時、弱冠二十歳のナース。長田区で被災し、自宅建物は全壊判定だった。震災後は地元でボランティア活動に参加。被災者向けミニコミ情報紙『ウィークリーニーズ』編集・配達。

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