阪神・淡路大震災で失われたモノ、残されたモノ、生まれたモノ…そんな記憶を記録します。

阪神・淡路大震災建物被害

倒壊したビル (長田区大橋 1995年2月)
  • 全壊
  • 半壊
  • 一部破損
  • 破損合計
  • 大規模被災マンション
  • 被災マンション合計
  • 全焼
  • 半焼
  • 部分焼
  • ぼや
  • 焼損合計
  • 焼損床面積
  • 被災住宅ローン残件
  • 10万4,906棟(18万6,175世帯)
  • 14万4,274棟(27万4,182世帯)
  • 39万506棟
  • 63万9,686棟
  • 172棟[2]
  • 2,532棟[3]
  • 6,982棟
  • 89棟
  • 299棟
  • 113棟
  • 7,483棟
  • 83万4,663平方メートル
  • 1万5,000件(推定)[8]

    出典元

[ALL]『阪神・淡路大震災について(確定報)』総務省消防庁,2006年05月19日発表

[2]『阪神・淡路大震災復興誌[第2巻]1996年度版』震災復興誌編集委員会,兵庫県,21世紀ひようご創造協会,1998年

[3a]第三節 自力再建の現況と支援制度 3.被災マンションの再建『阪神・淡路大震災復興誌[第3巻]1997年度版』震災復興誌編集委員会,(財)阪神・淡路大震災記念協会,1999年

[3b][2001/02/20]被災分譲マンション「建て替え」は2000年内に完成(神戸新聞)

[8]倒壊—大震災で住宅ローンはどうなったか』島本慈子,筑摩書房,1998年

用語解説

    建物被害調査  

この地震における建築物の被害状況について、"被災地全域"にわたる"信頼できる"データというものはない。

被災地の全域を調査した国(総務省:当時は自治省消防庁)による確定報の数値は、各被災自治体による罹(り)災証明書作成調査時のデータを集約したもの。"罹災証明書"とは、家屋が「被災した事実の証明書」のこと。自治体は被災地の全域を「棟」ベースで調査し、罹災台帳を作成した。しかしこれは全国的にも前例がなかったことで、そうした経験もなく専門家でもない職員(多くが税務担当者だったが自治体によっては消防や福祉局なども)による外観目視と住民からの事情聴取(あるいは写真による申請)に頼ったこの調査は、自治体によって手法や書式も異なり、法的・学術的な根拠もないものだった。この調査に基づいて世帯別「罹災証明書」が発行された。

一方「戸」ベースで建築物の構造的な被災状況を詳細に調査した学会や研究機関・企業による学術的調査は、被害の大きかった中心部をほぼ網羅するのもだが、被災地の全ての地域を調査したものではなかった。これはあまりの被害の大きさにより、早期の組織的学術的調査の実施が困難だったこと(緊急性の高い応急危険度判定や救助・救援活動の優先と、情報交換・交通・宿泊場所・人員確保などのさまざまな問題)などによる。

建物の被害調査には、最も初期の二次災害防止するための「応急危険度判定」(建物の建つ土地を調査する「被災宅地危険度判定」もある)と、自治体が支援の目安とするための「罹災証明調査」、修繕のために調査する専門的な構造調査があり、それぞれ目的や基準が異なる。しかし今回は専門家以外にはその違いもわからず、被災者は混乱した。その結果、応急危険度判定を受けて建物を解体した例も少なくなかった。

罹災証明書の調査には、様々な問題点を指摘され教訓が残された。そこに住家のみならず様々な建築用途が含まれていること、多数が入居する集合住宅の被害でも「一棟」になってしまうこと等により、そこから被災地域の正確な減失住宅戸数を導くことは困難だった。自治体による「住宅・土地統計調査」はあったが、直近は2年前となる平成5年のデータであり、まちの変動の大きい神戸の数値としては古いものだった。こうしたデータも含めてのさまざまな専門家による推計の結果も、14〜34万戸と開きが大きかった。この減失住宅戸数の推計は、後に仮設住宅の建設戸数や復興住宅建設や都市計画も含む住宅再建計画の施策決定にも大きく影響することとなった。

  • 関連文献

  • 『兵庫県南部地震災害調査報告速報』日本建築学会,1995年
  • 『地震に強い建築 阪神大震災の教訓[復興編]』日経アーキテクチュア編,日経BP,1995年
  • 『土木が遭遇した阪神大震災 被害現場が教える地震防災へのヒント』 日経コンストラクション編,日経BP社,1995年
  • 『建築雑誌 特集 兵庫県南部地震の被害 1995 09』日本建築学会,1995年
  • 『都市・建築防災シリーズ』鹿島 都市防災研究会編,鹿島出版会
  • 住宅白書〈1996年版〉阪神・淡路大震災とすまい』日本住宅会議編,ドメス出版,1996年
  • 地震に強い新・住宅の条件—阪神・淡路大震災からの教訓』古井一匡ほか著 住宅情報関西版編集部編,メディアファクトリー

    罹災証明書  

罹災証明書の受付整理券配布に、朝から長い列が区役所を取り囲んだ。
(長田区北町・区役所周辺 1995年2月)[クリックで拡大]

義援金の配給や固定資産税台帳の作成は、この罹災証明書に基づいて行われた。また一部民間の支援において、保険金の支払いや就業先の見舞金などの各種給付、私立学校の学費免除、銀行の融資などの様々な場面で、この書類提出を求められた。証明書の法的な裏付けはないにも関わらず、これが事実上の支援の基準となっていった。さらにはこの時の判定が、後々まで強く影響していくこととなる。復興公営住宅の入居申込みや2000年4月から始まることとなった「被災者自立支援金」支給の細かい要件も、この証明書に沿うものとなった。

罹災証明書の発行は、"住宅取得時の所得税特別控除の特例"[6]の申請に必要だったため、2005年度いっぱいまで受け付けられた。

この罹災証明書発行の混乱を教訓にして、その後は国でも調査や発行に関しての議論が行われた(内閣府「災害に係る住宅等の被害認定基準検討委員会」)。また被災各自治体においても新しくマニュアルが作成されている。神戸市はその後に起きた災害被災地に職員を派遣し、罹災証明の調査や発行などについての支援を続けている。西宮市では震災時に独自にプログラムした被災者管理のソフトウェアを全国の自治体向けに提供している。兵庫県は2006年、自治体職員が行っている被災家屋の被害認定作業の専門性と経験度を高めるべく、独自に「家屋被害認定士制度」を創設した。

    建物被害

    一部損壊  

2006年05月19日、兵庫県はこれまで確定していなかった県内の一部損壊数を29万7811棟と発表した[5]。これは住宅取得時の特例(住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例)[6]の申請に必要な罹災証明の発行を、制度終了の2005年度まで続けていたため。それを受け再集計した結果、神戸市内の計12万6197棟などが加えられこの震災の全住家被害数が確定。

これにより国(消防庁)によるこの震災の最終的な被害データが確定した[7]

    被災マンション  

全壊判定の集合住宅の廊下。壁にはX字型にひびが入り内部が見え、ドアも閉まらない。
(長田区 1995年2月)[クリックで拡大]

兵庫県による集計(172棟)は、全半壊の判定で大規模な補修や建て替えが必要な棟数[2]。不動産情報サービス会社「東京カンテイ」の調査(2,532棟)は、被災した分譲マンションのすべての合計。さらに複数棟マンションの場合は棟ごとに集計している。

この全被災マンションの内、「83棟」が大破、「1,988棟」が軽微な損傷の判定だった。そして「115棟」が建て替えを決め、「6棟(5物件)」が建て替え決議を巡り訴訟になり、6棟が再建を断念し土地を処分した。また95%にあたる2,405棟が規模の大小を含め補修により復興した。[3]

2010年1月、最後の被災マンション「アクシアス宝塚小林[旧:宝塚第3コーポラス(宝塚市)]」が再建[4]

  • 参考文献

  • 第三節 自力再建の現況と支援制度 3.被災マンションの再建『阪神・淡路大震災復興誌[第3巻]1997年度版』震災復興誌編集委員会,(財)阪神・淡路大震災記念協会,1999年

    焼損床面積  

この地区の8割が焼損してしまった。
(長田区御蔵5丁目付近 1995年2月20日)[クリックで拡大]

この面積は、以下の面積に相当する。なお、この64%が長田区の焼損面積である。

  • 焼損床面積との比較 

  • 東京ドームの約18個分
  • 京セラドーム大阪(大阪ドーム)の約25個分
  • 沖縄八重山諸島・竹富島の約1/7
  • ポートアイランドの約1/5
  • 国営ひたち海浜公園/国営武蔵丘陵森林公園の約1/4
  • 国営昭和記念公園の約1/2
  • 所沢航空記念公園の約1.7倍
  • 幕張メッセ/バチカン市国の約2倍
  • 天王寺公園の約3倍
  • 酒田大火(1976)の焼損面積の約3.7倍
  • 日比谷公園の約5倍

    被災住宅ローン残件

震災で住宅が被災し失われた中で、持ち家でありかつ住宅ローンが残った数(ライター・島本慈子氏の報告)[8]。これらの全体像を把握できるような統計及び調査は行われていないという。このため減失住屋数や、その中の住宅ローン保有率をそれぞれ推計した上で算出している。また同件については国会議員の国政調査要請に拠る大蔵省銀行局銀行課作成(1995年4月11日)の簡易な調査ペーパーがあり、ここにも推計値が提示されている。

また兵庫県による二重ローン保有者を対象とした、その利息分を10年目まで助成する「住宅債務償還特別対策事業」の申請件数は、およそ1,800件以上だという(兵庫県住宅政策課)[9]

  • 被災者の住宅ローン残高推計(大蔵省まとめ/1995年) 

  • 住宅金融公庫分 : 約400億円 / 約4,000戸
  • 全国銀行分 : 約1,500億円〜3,000億円 / 約1万5000件〜3万件
  • 関連新聞記事

  • [2010/11/10]備える:災害後のために/3「二重ローン」防ぐ地震保険(毎日新聞東京本社朝刊)[9]
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