阪神・淡路大震災で失われたモノ、残されたモノ、生まれたモノ…そんな記憶を記録します。

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◉のぶレポート

新潟県中越大震災被災地をみつめて
〜現状とボランティア活動報告〜 ❷

新潟県小千谷市 ◉ 2005年6月25日

Text & Photos by 吉田のぶ

初出『月刊まち・コミ』

2011.1  up
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小千谷市塩谷地区の様子 新潟県小千谷市 2005年6月12日)
大規模な崩落現場。山間部地震の恐ろしさを実感。(新潟県小千谷市塩谷地区 2005年6月12日)
Photo:吉田のぶ  [クリックで拡大]

小千谷市十二平地区、浦柄地区

2005年6月25日、26日。被災地で住民との信頼関係をつくりながら支援活動を続ける仲間に合流して十二平(じゅうにだいら)と浦柄(うらがら)でそれぞれ作業に参加した。

小千谷市にある十二平は山に囲まれた十数世帯の集落で集落移転を決めている。十二平に至る道路は工事の関係者のほかの進入を規制するためゲートを設けてある。山道にはいると急勾配の登り下がりする道路を通過するが、至る所で崩落していて、現在通行できる仮復旧された道路から離れたところに壊れた舗装が落ちていたりする。被災以前の地形や道路の位置は解らないが、激しく変形していることがわかる。

この日の作業は解体が決まっっている建物の分別作業。からぶき屋根の民家で木材の部分だけ残して、水道管やトタンといった金属などを撤去する。

作業現場となった依頼人の老夫婦の家の横には川が流れている。6〜7メートルほどの川幅が、家の目の前にきて不自然に狭くなっている。対岸が迫ってきているのだが、よく見ると崩れてきた土砂だ。おばあちゃんが「あんな所からこれだけの土が落ちてくるんだから、すごいなぁ」と指さす先を川越しに見上げると、目測で高低差200〜300メートル。数百メートル離れた山の頂が大きく欠けている。実際のところは解らないが、山の頂の土砂が谷を滑り降りて来たように見える。住宅から10数メートル手前で止まった土砂は、高さが5メートルを超えている。

翌26日にお邪魔した浦柄は、本来なら山古志に続く国道291号線沿いにある。地震発生直後に泥水が集落一体に流れ込んだ。地震と同時に水害の被災地となった。床上まで浸かった家屋も多く、この地での復旧作業は大量の泥を取り除くことから始まった。道路が復旧して避難勧告があけた11月下旬に自衛隊とボランティアが住民とともに行った過酷な作業は当時を知る人に強い印象を与えている。

今は一見きれいな町並みが戻っているが、所々に当時の様子をかいま見せる。この日作業を行ったお宅の駐車スペースとなっている高基礎部分のコンクリートには胸の高さに土色の汚れが残る。家主は当時を語り継ぐために洗い落とさないと言う。

この日の作業は鯉を育てる水槽の濾過用の資材を運び出して水洗いする。養鯉業を再開するため家族総出で作業にあたっていた。

あとがき

現地で継続して活動しているボランティアは成熟した地域コミュニティの中に溶け込んで、信頼関係を築きながら様々な活動に取り組んでいた。顔の見える関係をつくり、住民と共に考えていくことで活動が広がっている。彼らは信頼を築く為に大変な努力をしてきたと思うが、自分を一人の人として見てもらうことで充実感ある活動に巡り会える。

今後広がりを求めるのであれば、ボランティアと被災地をつなぐコーディネートよりも人と人とをつなぐ事に力を注ぐ必要があると考えさせられた。

[了]

◉初出誌
『月刊まち・コミ』号外(阪神・淡路大震災まち支援グループ まち・コミュニケーション発行 2005年7月1日)掲載を再録。
#文中に登場する名称・データ等は、初出当時の情況に基づいています。

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Text 吉田のぶ

震災後の4月より神戸市長田区などで震災ボランティア活動を行う。その後も神戸を拠点に、ガテン系ボラとして様々な個人や組織と共に災害被災地で支援活動に携わっている。30代、阪神間在住。

◎ ブログ
のぶろぐ 縁の下のもぐら日記

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塩谷地区  Photo:吉田のぶ(新潟県小千谷市 2005年6月12日)
塩谷地区  Photo:吉田のぶ
(新潟県小千谷市) 2005年6月12日
十二平地区  Photo:吉田のぶ(新潟県小千谷市 2005年6月25日)
十二平地区  Photo:吉田のぶ
(新潟県小千谷市) 2005年6月25日
浦柄地区  Photo:吉田のぶ(新潟県小千谷市 2005年6月26日)
浦柄地区の様子 Photo:吉田のぶ
(新潟県小千谷市) 2005年6月26日
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